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だけどこれもまた不思議なもので、俺は泣き声だけでこの電話が誰からのものなのか悟ってしまう。
何故なら…俺が何度も泣かせて来た女だからだ。
「冴子?」
その問いかけに電話の向こうで泣き声が一瞬止まる。
そして、しばしの沈黙の後、彼女は弱々しい声で呟いた。
「やっぱり…歩にはすぐバレちゃうね」
「……どうしたの?こんな夜中に」
別れてから2年、冴子が俺に電話をかけて来たのは初めてだ。
彼女への想いを断ち切るつもりで、メモリーから削除したのに。
彼女は今でも俺の番号を消さずにいてくれたことを一瞬嬉しく感じた。
しかし…それはすぐに自分の中で打ち消す。
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