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「頭では分かってるの。
もう歩に頼っちゃいけないってことも。
だけど……ちょっとだけ声が聴きたかった」
泣きながらも必死に明るく伝えようとしている冴子の声に、こんなにも胸が痛むのは今でも俺が心のどこかで冴子を愛しているからなのかもしれない。
それでも、俺は彼女を突き放す。
「頼るなら…アタシじゃなくて龍都にしなさいよ」
「…………」
「剣持が他の女と浮気でもした?」
まさに図星だったのだろう。
冴子は自嘲気味にそれに答えた。
「もう歩には全部バレバレだよね」
「早く離婚して龍都の元に行けばいいじゃない」
いや、お願いだから早くそうしてくれと心で思いながら言い放った俺に冴子は深いため息をついた。
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