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「たまには会長ともお酒を飲みたいわね」
「……それは父も言ってた」
冴子と付き合っていた頃は、あのクソじじいともよく酒を酌み交わした仲なだけに、なんだかんだ言っても気心は知れている。
そして冴子が思っているほど偏屈じゃないことも俺は理解している。
この会社に根付く派閥抗争に俺が巻き込まれないのも、冴子の後ろ盾と会長の気遣いだということは重々承知していた。
「近いうちにクソじじいのところにでも遊びに行くわ」
「…分かった。伝えておく」
いつか必ずお前を龍都の元へと戻してやる。
心の片隅でそう思いながら縁側から月を見上げた。
「ところで落ち着いた?」
「うん。夜中に電話なんかしてごめん」
申し訳なさそうに言った冴子に小さく笑う。
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