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もう二度とあの頃には戻れない俺と冴子。
お互いがそれを痛いほどにわかっているからこそ、これ以上に踏み込むことはない。
「じゃあ、アタシ今夜はちょっと仲間と飲み過ぎちゃって効いちゃってるから寝るわ」
「珍しいね、歩が飲み過ぎるなんて」
「いい飲み仲間が出来たのよ」
「…そう。じゃあおやすみ」
「おやすみ」
電話を切ってひとつため息をつく。
俺はいつまでこんなオネエの仮面を被り続けて行くのだろう。
冴子と龍都が元のさやに納まってくれたら……もうこんな演技を続ける必要もなくなるのに。
いや…たとえ二人が元通りになったとしても、俺はこうして演技を続けて行くのだろう。
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