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「待てど暮らせど来ぬ人を 宵待草の心もとなき、か」
縁側から月を見上げながらポツリと呟いたのは竹久夢二の宵待草の一節。
夕刻に開花して夜の間咲き続け、翌朝には萎んでしまうこの花のように俺の人生も儚く散って行くのだろう。
それでもこんな人生であっても、俺は俺なりに幸せだと思っている。
自分の幸せよりも、人の幸せを願う方が。
俺が部長になった時、香露を昇進祝いにくれた……会長のように。
たとえオネエの仮面をつけたままこの先の人生を生きるとしても、俺は常に誰かの手本になれるような人間でありたい。
そう心で願いながら、下弦の月を見つめていた───。
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