3819人が本棚に入れています
本棚に追加
すっかり酔いつぶれた映見と葉月を小さなベッドに押し込んでから、俺は後片付けを済ませて葉月の部屋を出た。
まだ肌寒い春の深夜。
葉月の家からタクシーを停められるような幹線道路までは、まだ道のりがある。
せっかくの心地よい酔いも醒めそうだ、なんて思いながらコートのポケットに手を入れ歩いていると、街灯の向こうから歩いて来た男の姿に足を止めた。
「…あ…楠田部長こんばんは」
驚いたように俺に挨拶をして来たのは、確か営業部の新人。
名前までは思い出せなかったけれど、俺も挨拶を返す。
「こんばんは。君は確か営業部の…」
「はい、黒田友哉です」
にこやかに返してくれた黒田君は甘いマスクに柔らかな物腰の好青年だ。
最初のコメントを投稿しよう!