Act.1

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「遥香ちゃんおはよう。今日は工場からの横持ち5回の予定だったよね」 そう私に微笑みかけてくれるのは、自分のトラックでこの倉庫と工場の間の横持ちを30年も続けている春日さんという年配のドライバーさんだ。 「春日さんおはようございます。 じゃ今日も出庫ターミナルの1番を常時空けておきますね」 「いつも悪いね」 「いえ、横持ちは優先車両ですから」 「あ、それとね俺も来月でいよいよ定年なんでさ。 来週からこの仕事を後継してくれる若いの連れて来るから」 「そうですか……春日さんがいなくなるのは寂しいですね」 まだ新入社員で要領の悪かった私に嫌な顔ひとつせず、接してくれた春日さんに何度か救われたこともあった。 だから私にしてみたら春日さんは、お父さんみたいな存在だっただけに、本当に寂しいと思う。
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