見殺し

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しかしその田中家も戦後の農地改革で家の周辺と、解放から逃れた山林のみ小地主になってしまった それでもそれなりの資産はあるが、税金も多いので、思われてるほど豊かではない 財産を持っていると言う事は、それを生かせなければ負担だけになるのだ ところで大山に居宅のある彼が実家に帰ってるのは理由がある 妻と一戦交えてしまったのだ その内容は覚えていない 確か娘に関して些細なことだったような気がする 腹が立ったのは妻の言った一言だった 無責任 妻ははっきりそう言った 教育放棄とも言った まるで自分だけが家庭を切り回してるような言い方だ 確かに妻の言うことも一理ある しかしすべてを犠牲にして働き蜂に徹してると思ってる彼にとっては許し難い一言だった 彼だって上手くやりたい時だってある 大学時代の友人や同僚の中には、妻子がありながら若い娘とよろしくやってる奴もいる ごくみじかな連中同士の酒の席では、そう言うことが匂ったりしている
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