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そして小さな応接セットがあったが、そのソファーには名高と思える中年男が仰向けに寝っ転がっていた。
この埃っぽい、悪臭さえする部屋の主としては、名高は似合っていたが、かつての名高、アルマーニを着込み、尖った靴を履き、キザな物腰は及川光博真っ青と言う、かつての名高からは想像もつかない、今の名高である
安い生地のスラックスに少し色がしみたインナーは、まるで武田壮である
身体つきも、かつての名高とは違い、がっちりした肩幅、太い鎖骨、立派な胸筋、がっちりした二の腕には何か刺青さえあった。
名高はアダルト雑誌を顔の上に乗せ横になっていたがめんどくさそうに起き上がった
現れた風貌もかつての名高からは想像もつかなかった
髪は前髪を横に流しているが横や後ろは伸び放題
少しニヒルな陰りのあるマスクは年を取り深みを増したとは言え、伸び放題の髭のため哲学者のようにさえ見える
それを見てキョトンとした顔の彼に名高は言った
「とりつかれてるな
相手は中年のしょぼくれた男だ
悲しい目をして上から君を見下ろしている」
彼は思った
この男は本物だ
出任せで当たるわけはない。
彼の心に急に感情がこみ上げて来た
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