その男名高敦郎

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代わりにあったのが親父の遺書だった 親父の遺書には、こう書いてあった もし自分に何かあったら戦いは敦郎に引き継がせろと 賀茂一族の名に懸け決して見殺しにしては行けないと」 彼はそれを聞いた時心が強く痛んだ 『自分が死んだあとまで見殺しにするなと言い残した人がいる それに比べて俺はなんて情けないんだ』 名高は話し続けた 「しかし俺は情けない事に、そこまで行っても悪霊に立ち向かう覚悟がなかった 怖かったんだ 術も精神力も明らかに遥かに上回る親父や親類が返り討ちにあったほどの悪霊相手に未熟な俺に何が出来る、何も出来ないさ、親父は賀茂一族の名誉のため、敵に後ろを見せるわけには行かず息子を勝てない敵に立ち向かわせようとした 俺には、そう思えた 陰陽道を守る賀茂一族の重圧が俺に逆に拒否反応を起こさせた 息子を守ろうと親父の遺書まで隠してくれたお袋の思いも無駄にしたくなかった お袋は罪悪感に苦しみ自らけりをつけたんだ、それを無駄にしたくなかった だが陰陽道の責任、助けてやるべき者の存在は俺の良心を容赦なく呵責した 俺はそのつらさに立ち向かわず女や快楽に逃げた
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