その男名高敦郎

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彼は名高の壮絶な過去と一族の因縁話に夢中になった 信じられないが、日本にはまだこんな一族が存在するのだ 夢中になった彼は不覚にも名高の入れたコーヒーを口に運んでしまった そしてそれに気がつきコーヒーを吹いた そしてゴホゴホむせた 彼は急いで汚れたテーブルの上をハンカチで拭いた 名高はそれを冷ややかに見ていた 彼は今の名高にバカにされるのは、前のキザな名高にバカにされるのと別の意味で腹立たしかった。 しかし次に名高の話した下りはそんな感情もぶっ飛ぶほど壮絶な物だった 名高はまた話始めた 「女や酒に溺れてる間だけが使命感や罪悪感から逃げられる みっともなくも俺は逃げつづけた そんな自分が嫌で、そんな自分から逃れたくて、また酒や女に逃げる、そんな自分が情けなく まるで負のスパイラルにはまったように俺の生活は荒れて行った その日もディスコでナンパした女の部屋に上がりこんで、よろしくやって女の横でうたた寝していた 突然俺の目の前に苦しんでる若い女の姿、否若いはずなのだが、それさえ確かではなかった。 何しろ髪は銀色で胴体も手も足も枯れ木のように細くなり身体全体に活力が感じられなかった
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