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数人の村人が俺を囲んだ
俺は事情を話さずを得なかった
村人達は涙を流さんほど喜んだ
奴らは隣村の村人だった
その村長の枕元に立ち親父の霊は俺が村に向かう事を告げたらしい
俺は村が壊滅している事を理由にその場を去ろうとしたが半分脅迫のような形で無理やり、隣村にある祠に連れ込まれた
そこにはあの若い女がいた
それはあの村に現在住んでいる者の最後の生き残りだった
祠の中は結界が大きく張られていたが邪気を染み入るように結界を抜け若い女の周りに屯していた。
実際の女は夢より酷い状態だった
毛穴は立ち血管は、あちこちで浮き出て身体の色は土気色。
目は飛び出しそうだった
あまりの痛々しい姿に俺は目を伏せた
隣村の村人は言った
医者に見せたら生きてるのが不思議と首を傾げるぐらいだったそうだ
俺もこれほどの激痛に耐えられる理由がわからなかった。
しかしその時女の発するか細い声を聞き逃さなかった
『私の赤ちゃん』
女は新婚で産み月だった
亭主は悪霊に取り殺されたが、せめて我が子は世に出してやりたかった
だから地獄のような責めにも音を上げなかったのだ
その時俺の中の思いが全てつながった
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