その男名高敦郎

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彼は真っ青の顔で言った 「じゃあ娘に、娘の沙羅に取り憑くと言うのか それじゃ俺は除霊は出来ない しかし除霊しなきゃ家庭はガタガタになる 離婚するしか 離婚して一生取り憑かれて生きつづける それしか家族を守る方法はないのか?」 「落ち着けよ田中君、話は最後まで聞いてくれ」 そう言われて彼は少し気持ちを落ち着かせた 「すまない名高さん」 「田中君、除霊は確かにお金の力だけで出来るし、術だけで君や家族を守れるならやってあげたい だけど霊は執念深い 除霊して安心してると君の娘さんの子供、それどころか君の何代も後の子孫に突然取り憑くかもしれない だからその場しのぎの、本当に非常手段なんだ 霊による危険を先送りするだけに過ぎない」 「しかしそれじゃあどうすればいいんですか 教えて下さい こうしている間にも俺は妻や娘が心配なんですよ」 名高は彼の近くに来て肩に手を当てた 「霊を成仏させてやるんだ それが一番いい方法だ」 「どうすれば成仏させられるんだ いやいくら出せば成仏させてくれるんですか?」 「いくら?」 「金は作ります 会社にも銀行にも借金出来ますし いざとなれば私名義の田畑や山林を手放してもいい」
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