その男名高敦郎

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しかし人間としては最低の事だ」 名高は彼を突き放した 彼は頭を抱えた 「仕方なかったんです 俺はそんな人間じゃないつもりだ 魔が差したんです あの時ケータイさえ通じれば」 名高は冷たく言った 「かつての俺を見ているようだ いつも逃げてばかりで、言い訳ばかり言う 間違いを認めようともしない 本当に君を見てると恥ずかしい しかしどんなにダメ野郎でも、どこかで踏みとどまらなきゃ人間でさえなくなるんだぞ かつての俺のように」 「じゃあどうすればいいんですか どうやったら、あの人は俺から離れて成仏してくれるんだ 教えて下さい」 彼は名高に跪いた 名高は言った 「もし、君が迷惑をかけられたとしよう 口先だけ謝られて、その人間を信じられるかい 霊だって同じだ」 「じゃあどうすれば」 「誠意を見せる事だ 俺は君に誠意があるとは思えない」 「何故ですか」 「君は見殺しにした彼の名前も知ろうとしてはいない」 「それは、新聞にも事件を特定する要素がほとんど報道されてなくて」 「本当にそれだけか 見殺しにした人間の氏名もわからないと言う事は
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