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それでも彼は物珍しさもあり、街にかわりつつある換地を見て回った
まだ人が住んでいる町と言う感じはしなかった
まああえて例えるなら展示販売用のモデルハウスの展示場と言う感じだった
綺麗に区画された道のあちこちには作業用の車や、内装などを荷台に乗せた軽トラなどがここかしこに置いてあり、その間を縫うように作業員が仕事をしていた
突然彼は急に鼻を摘まんだ
彼の嫌いな新建材の匂いが匂って来たのである
彼は少し逃げるように、その場を離れた
しかし少し離れると、ある物に目を奪われた
そのある物とは花束だった
事件現場に供えてある花束が一輪供えてあった
彼は思った
『ここがあの暴行現場だ』
そう、思った彼は測量の仕事で計測器を覗いている技師に聞いた
〈その時近くで二人の男の間に短い電話の会話がされた
「ついに見つけた
今度こそ間違いない
暇を見て寄ってた甲斐があった」
今のは若い男の声だった
それに対して、その電話相手がしゃべった
これは年配の男の落ち着いた声だった
「早まった事をするな、お前の事を管区の主席監察官が、まだ疑っている
あの男は階級は警視正に過ぎないが手心など加えるような男じゃない
尻尾をつかまれたらおしまいだ
何も始末しなくても暴行現場の目撃者であるなら犯人にでっち上げる事も出来る
次の移動で奴を関東管区から飛ばしてやる、それまで手をださず調査に徹しろ」
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