見殺し

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そんな事を考えながら彼は長い廊下をあるいた 南西にある彼の部屋前の廊下を真っ直ぐ進むとダイニングキッチンとリビングが一緒になった部屋に突き当たる そこに入らず右に進むと玄関に向かい、玄関に向かって左に進むと納戸やバスルームのあるスペースに行けた 彼はリビングに入り引き戸をしめた 新建材の匂いを遮断したかった 引き戸を閉めると嫌な匂いは消え、かわりにうまそうな匂いが彼の鼻の粘膜を刺激した その匂いは肉のこんがり焼けた香ばしい風味に卵と牛乳のまろやかさが混じった食欲を刺激する匂いだった 彼は一度にご機嫌になった 入って左側に大きな液晶テレビが置いてある その液晶テレビにリモコンを使わずへばりつくようにチャンネルを替えてる中年、否熟女と言った年齢の女性がいた 無地のワンピースに、大きなエプロンを掛けているその女性は彼が入って来ると急いで振り向いた 「坊ちゃん、お目覚めですか」 「清子さん、何度も言ってるでしょう リモコンを使って下さいって」 女性の名前は倉谷清子 彼の家の家政婦だ
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