屋根裏の本

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東京霞ヶ関に偉容を誇る摩天楼の一つ警察庁本庁舎 全国警察組織の総本山である その近代的な長い廊下を二人の背の高い男が今ブッキングしようとしていた かたや飛ぶ鳥落とす長官官房人事課長(警視監)瀧川龍蔵こなた関東の腐敗警察官を震え上がらせる泣く子も黙る関東管区首席監察官鬼野岩造(警視正)である。 瀧川は紳士風の知的な顔立ちをしており一見柔和にも見える 対して鬼野は名前通り目つきの鋭い攻撃的な風貌で口元にはニヒルさを漂わせる、見方によっては、ヤクザにも見える容姿だが、それを引くとなかなかの美男子である 何か過激なスポーツを好むらしく胸幅肩幅とも、警察官としても尋常ではない 二人は不仲である と言うより管轄を超えて警察庁や警視庁まで嗅ぎ回る猟犬のような鬼岩を疎まない霞ヶ関警察官僚はいないと言って良かった。 いくら不仲であって も警察庁も組織であるから上下関係が存在する 同じキャリアでも瀧川は鬼野岩よりも二階級も上である したがって鬼岩は形通り会釈した いつもは無視するか適当にしか挨拶を返さない瀧川だが今日は声を掛けた 「鬼野君、相変わらず公安委員会詣でかね」 鬼岩のドスの利いた声が返って来た 「仕事ですから」
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