見殺し

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清子は身をすくめるようにして言った 「すいません坊ちゃん 機械物は苦手で」 「ええ、でも最近の液晶はタッチボタンが弱いんです なるべく直接は止めて下さい」 清子は恐縮して言った 「すいません もうしません」 彼は可哀想になって言った 「言い過ぎて悪かったね 僕も最近の技術にはついて行けない」 清子は急に何かに気がついた 「お坊ちゃん、すぐご飯の支度を」 「いや、朝飯は出来てる、ローストビーフとスクランブルエッグだろう?」 「えっ私食事の支度してました?」 彼はキッチンの傍らのテーブルの所に行き真ん中にドンと置いてある料理にかけてある新聞を取った 思った通りの物が置いてあった。 料理を見て彼は思った 『お袋が作った料理だ』 彼はスクランブルエッグを見て料理の作り手を確信した 清子の料理だと、スクランブルエッグだか卵焼きだがわからない物がならぶはずだからだ 彼が清子にそのことを言おうとすると先に清子が言った 「わたくしが丹精して作った料理です どうぞ召し上がれ」 彼はあんぐりと口を開いてしまった 『作ったかどうかも覚えてないのか? 九十過ぎてるから仕方ないか』
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