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その老婦人は八十ぐらいだろうが背筋がピンとして背丈もあり、額が広く聡明そうだった
目鼻立ちが良く、毛は綺麗に染めてあり上品な感じがした。
薄い草色の長着に豪華な帯を締めており、どこから見ても大家の大奥様と言う感じだった
彼は言った
「この人は?」
業者は頭を掻いて言った
「どうしても一緒に来ると言うもんで」
老婦人は言った
「無理を頼んだのは私です
いても立っても居られなくて、お許し下さい
それは私がずっと探していたものに違いありません
見つけて下さってありがとうございます」
婦人は袂から小さな箱を取り出した
有名デパートの商標が書いてある包み紙のその箱は明らかに商品券と思われた
その厚さから見るとかなり高額だ
彼は言った
「昨日引っ越して来て何もないんですけど、ここじゃ何ですから中へどうぞ」
彼は洋間に二人を通した
そして山口だけをバルコニーに呼び出してサッシを締めた
彼は言った
「いったいどう言う事だこれは」
「どうゆう事って?」
「あの人一体誰だ」
「この部屋の前の借り主のお祖母さんです」
「あの言い方じゃ、あの人のもんじゃないんだろ」
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