屋根裏の本

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「鉄アレイ? 活発な娘さんですね」 「本当に孫は活発で利発で努力家で、申し分ない子でした」 『でした?』 彼は言い回しが気になったが、追求は止めておいた へたな好奇心は身を滅ぼす 彼は本を手渡した 「どうぞ、これが本です」 老婦人は本を受け取ると、その本を抱きしめた 彼はそれを見て警戒した事を反省した 老婦人はお礼を言って山口の車に乗せられ帰って行った 彼はそれを三階の階段から見送ると時計を見た 「早く会社に行かなきゃ ネクタイネクタイ」 彼はネクタイのないことに気がついた 取れてしまったようだ 寝ていた和室にあるはずだ 彼は和室に戻った 床に転がっているネクタイを拾い上げクビにネクタイを縛り付けていると、ある事に気がついた 畳が濡れているのだ 「おい水漏れかよ」 彼は天井を見た 天井には水が漏れている場所はなかった 第一東京全区晴天が続いていた 「まさか水道管が天井通ってる事はないよな じゃあ下から湧き出だって事か」 彼はその液体を触って見た 少しだが粘着性があった 『俺のよだれか 否よだれなら、もっとベタベタしている この弱い粘着性は涙』
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