屋根裏の本

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山口は逃げるように電話を切った 彼は言った 「家主か、いきなり前の借り主を教えてくれと言っても相手にされないだろうな 朝飯でも食って来るか?」 彼は部屋を出たら同じアパート内を訪ねて見た 時間的に留守が多かったが一軒主婦がいたが、どう言う理由で聞いていいか頭に浮かばず挨拶だけにした 彼は結局パンとコーヒーを買って近くの小公園で朝食にした その時非通知着信が入った 彼はわん切りとも思ったが、それでは非通知着信はおかしいのでとって見た 軽やかな鈴の鳴るような声が聞こえて来た 「ごめんなさい不信な電話掛けちゃって 愛実です、覚えてますか」 「もちろん昨日ですから」 「冗談です、昨日は途中でいなくなってごめんなさい ちょっと社に戻る用事が出来て」 「いえ、気になさらないで」 「お詫びに手料理でもご馳走でも思ったんですけど 奥様にいる方に失礼ですから」 「いやお構いなく、そんな迷惑なんて、あなたを探したわけではないし」 「なーんだそうですか、つまんない」 「いや少しは探しました」 愛実は笑った 「嘘ですよ、でもお礼したいんです お嫌かしら」 「いや妻とは別居、夫婦
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