見殺し

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清子は先代どころか先々代の前から田中家の家政婦をしていた ちゃんと勤め人と結婚したのだが、それでも通いで家政婦を続け、夫がなくなってまた住み込みになった 彼はテーブルについてポットからコーヒーを入れた 彼はコーヒーカップから漂うモカの心地よい薫りにひたりながら清子に聞いた 「清子さん お袋はどこへ」 「早起き会にお出かけになりました」 「ご近所付き合いですか」 「何ですって、ご金魚すくいあいですか」 彼は思わず清子の方 を見た 清子は女優の泉ぴん子に似た容貌て笑った その時金歯が光り彼は戦慄を覚えた 彼は言った 「清子さんのギャグはハイブロウでついて行けないな」 清子はきょとんとしていた どうやらハイブロウと言う言葉について行けなかったようだ 彼は鼻白んでしまいそうなので会話を変えた 「今日あっちへ帰ります」 「大山の方ですか」 「いや、そのまま帰ります」 「よろしいんですか」 「まあ、お互い少し冷ました方が 子供をいますし、お互い大人ですから」 「その娘さんの事で揉めていらっしゃるんでしょ」
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