屋根裏の本

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彼は周りを未練たらしく見て言った 「もともと俺の手におえる女じゃない ああいう女には相応しい男がいるもんだ」 『相応しい? 何を考えてる 俺は家庭を守るため多くを犠牲にしてきたんだ 上っ面な家庭主義者 とは違う』 その時彼の電話に着信が入った 会社からだった 結局彼は無断欠勤していた だから受信を伸ばしその理由を考えた しかし浮かばなかった ごまかすしかない 電話を取ると部下だった 部下の声がした 「補佐の携帯ですか」 「田代君すまない」 「どうなさってんですか、報告だけは入れていかないと」 「寝坊したんだ」 「では何時に御出社を」 「今日はやすむ」 「えっ」 「何とか君が繕ってくれ」 「わかりました お任せ下さい」 このさいだ田代係長の能力と忠誠心を調べてみよう 上司のミスを庇うのも部下の能力だ 彼も随分それで上司から信用を得てきた 田代に借りを作るが、ボーナス査定で返せばいい。 とにかく今は、ここに住んでいたと言う手がかりだけを頼りに調査をしなければならない たくさんの人間を尋ねなければ、過去に遡って調べるなんて出来るわけはない
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