屋根裏の本

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『えーい、当たって砕けろだ』 彼は農家の玄関の引き戸を開けた 「御免下さい」 奥から七十ぐらいの野良着の男が現れた 「はい何か?」 「人を探しています こちらへ随分前に住んでた人ですが、ご協力いただけないでしょうか」 「いいですけど、その人の名前は?」 「それが偽名を使ってると思うんですよ」 「それじゃ、調べようがないな」 「ここではよそ者とかは話題になるでしょう」 「ところであなた一体何? その人達と、どう言う関係?」 「申し遅れました 私は弁護士の田中と申します 実はある方の遺産相続につきまして相続手続きをとってるのですが、相続人の方の捜索も頼まれていまして」 相手側の反応が変わった 「弁護士さんでしたか、ご苦労様です」 「大変ご迷惑をおかけします」 「どのような人をお探しですか?」 「今から二十年以上前になると思うんですが、親子ずれの転入者で、父親は、まあ普通の男性ですが奥さんと娘さんは上品で綺麗な人です」 「そんな前の話をそれだけで思い出せと言われても」 「無理ですか?」
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