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「他に何か特徴のような者は」
「父親ですが、酔っ払うとおかしな事を言うそうです」
「どんな?」
「自分は先祖を憎んでるとか恨んでるとか」
「これはまたぶっそうな話ですね
そんな話は聞いた事がないな」
「そうですか」
「申し訳ないねえ
ちょっとお茶でもいかがですか」
「いや、相続捜索は時間が勝負なので」
「そうですか」
「あの、他に古くから住んでいらっしゃる方を教えていただけると」
「古い町内会の名簿があります
コピーをとって差し上げましょう」
彼は何度もペコペコ頭を下げた
その時声がした
「洞口さん夫婦の事じゃないか
忘れたのか親父
さえない男と釣り合わない品のいい女性
の若い夫婦者
それから人形みたいな目のぱっちりした女の子
みんな若い者は羨ましがってたじゃないか」
二階に続く階段から一人の男がそう言いながら降りて来た
どうやら、この家の息子のようだった。
息子は五十才ぐらいで長身でがっちりした身体をしていた
青いシャツをスラックスの上からはみ出して着て、その上からベストをきていた
父親は思い出したように言った
「あーいたいた、洞口さん、そう洞口さんだ」
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