見殺し

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彼はセルフで給油を終えると食堂スペースに車を移し止めた ぐい~んと言う音がして車が止まった 「なんだこの音は まあもうすぐ車検だからいいか」 彼は一人言を言いながら車を出て、購入して8年経つ国産小型乗用車のボディを撫でた 買った時は娘もまだ5歳、チャイルドシートも一緒に購入したなと彼は思い出に浸った ワンボックスカーはいかにも家庭的な彼が選ぶシャレっけのない車だった 食堂は平屋で、プレハブに外装したような粗末なあばら屋で、いわゆるトラッカー達が仕事中軽く食事を取るような場所だった 玄関ドアは開けっ放しでのれんが掛かっていた 彼はのれんを片手ではねのけるようにして店内に入った 少し暗めの白熱電球の下に集まった客達はトラッカーやバイカー、全国ツーリングでもしていると思える若者もいた そしてちらりほらりカップルもいた 玄関に入ってすぐ食券の券売機があった 彼は壁に掛かってるお品書きと、自分の空腹度を相談してカレーにする事にした 食券を買って正面にあるカウンターに、それを提出した 白い割烹着のコックは、それを無言で受け取った 彼は少し気分を損ねながら傍らのテーブルについた
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