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そして門灯に照らされ表札の字がはっきり確認出来るようになった
そこには墨字ではっきり北條と言う名字が書いてあった
彼は確然とした
「これが北條綾の実家北條家なのか
あの祖母の扮装から資産家だと思っていたが、これほどとは」
彼は闇のためもあり見えない塀の果てを見た
『この家の持つ財力、そこから生じる隠然たる権力の前に、洞口さんは妻と娘を連れて逃げるしかなかったのだ、きっと』
彼は洞口に深く同情した
『しかし洞口さんは何故俺をここに連れて来た』
彼は洞口に支配された車を見た
自分の車だが何故か物悲しく佇んでいるように見えた。
「答えてくれないのか?
どうにかして知る方法はないか」
彼は考えた
わざわざここへ彼を連れて来たと言う事はあの老婦人に会ってもらいたいと言う事じゃないだろうか
会って何をしろと言うのだ
『会えばわかるとでも』
彼の心の中に好奇心が起き始めていた
それは衝動に近い物だったが、この場を一刻も早く離れたいと言う気持ちは不思議にも引いていた
彼はとにかく門についている玄関フォンと連動している呼び鈴の前に立った
そしてその人差し指をその呼び鈴に対して伸ばして行った
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