破滅への課題

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「奥様、起きてらしてはお風邪を召します」 「大丈夫よ、それより何こんな夜分に」 「それが返事がないんです」 「酔っ払いの悪戯かしら」 「気持ち悪いです 警備会社に連絡しましょうか」 「モニターは?」 「すいません、この前故障しまして」 「心配しなくても、もういなくなったんじゃないの」 「ええ、ですけど 門の所まで見て参りましょうか」 「それこそ危ないでしょう あなたに何かあったら親御さんに申し訳ないわ 私が見て来る」 「とんでもありません奥様 丸美さん、理恵さん 蘭さん何やってんの 奥様」 インターフォンが切れた 遠くで引き戸が開く音がした 砂利道を踏み鳴らす音が遠くから響いて来た 彼の心臓は高鳴った 逃げたいと言う気持ちとその裏腹に事態がどう展開して行くのか知りたいと言う衝動的な感情があった 足音は止まった ドアフォンが通じた 流れて来たのは老婦人の声だった どうやら門の内側にも通話設備があるようだ 「どちら様でしょうか」 その問いかけに彼は困惑した 答える言葉が見つからない 澄子の声がした 「奥様、もう誰もいませんよ 戻りましょう」
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