破滅への課題

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戦々恐々としながら彼は役員室の並ぶ8階に向かった この8階だけは他のエリアと違い開口部がほとんどなかった。 エレベーターホールに出ると通路は三方に開けていた。 その内真ん中のエリア、これこそが会社の頭脳たる役員の専用室が並ぶフロアーである 三メートルに満たない木目の壁で囲まれた通路、その両側にある部屋部屋こそ世界中に子会社関連グループを含めて十万の社員を要する企業の重役達のオフィスなのだ。 そしてそのどん詰まりの部屋こそ一代で企業を起こし世界的企業に育て上げた伝説上の人物加藤勘祐の玉座のある社長室なのである 今まで彼はこのエリアに正式に立ち寄った事は一度もなかった(それはほとんどの社員に言えた) しかしエレベーターが八階に止まるたびに、その真っ正面にある社長室に目がいき、新入社員の頃からいつかは、この通りを堂々と歩いてやると闘志を燃やしていた。 今彼はその道を堂々と歩いている 呼ばれた理由はわからないが、とにかく社長にお呼ばれしたのだ なんとも彼は誇らしかった マイナスな気分はほとんど消し飛んでいた。 しかしそんな彼も社長室の前に来ると足がすくんだ 生まれて始めて社長と個人的な対面をするのである
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