第1章

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誰もが平和な一生を望む、しかしわずかに人生の歯車が狂っただけで人生は豹変してしまう、ここにそんな体験をした一人の男がいる。 男の名前は田中耕三 生まれは後にバブル経済の起こる1980年 日本繁栄の最後のしっぽまで体験するリッチ世代として少年期を送るが就職がバブル崩壊時期と重なるため苦労も味わっている まだ新入社員に毛が生えた時に日本企業に見舞われた大リストラの洗礼を受けるが、何とか辛く生き残り未だに大企業のサラリーマンとして高給と水準の高い福利厚生を受けている 家族は妻と中学生の娘 家庭のことは妻に任せきりだ 何しろ単身赴任が長いのだ 正確に言うと長くなってしまったのだ その話は、またとして もう少し彼を紹介しよう 彼の会社はコンピューターのシステム全般だが彼は監視カメラを制御する仕事だ 最近は普及台数も増えてビジネスがやり易くなって業績も上がって来たのだか いずれにしても花形とは言えない仕事だ この仕事にかかわって出世した人間はいない こう見ると彼は出世主義と思われがちだが男30過ぎて妻子を持つ身なら、普通の願望である 今までの例から言えば二年の単身赴任で本社に戻るのがルールだった
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