見殺し

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半分タレントの各界の専門家が並んでいる いわゆるコメンテーターだ 大学教授、作家、監督、元スポーツ選手、その中に最近売り出している探偵の姿があった かれは彼と同年輩のその顎髭面を見た途端、顔色を変えた 知り合いの男であった そして彼と因縁の深い男である 彼はそのまま店を出て車に逃げるように乗り、ハンドルに伏せるように顔を当てしばらく動かなかった しばらく伏せていると横のウインドを叩く音がする 見ると中年男が覗き込むように見ていた 彼はウインドを開けた 男は遠慮がちに聞いて来た 「どうかなさったんですか?」 「いえ、なんでもありません」 「あの、もしお出になるなら、出来るだけお早く願えると」 彼は訝しそうに周りを見た いつの間にか駐車場は満杯になっていた 彼は大変迷惑な事をしている事に気がついた しかし彼は虫の居所が悪かったので『ほっておいてくれ』と言いそうになってしまった なんとか彼はこらえた その男の後ろにある車には男の妻と幼い子供が乗っていたからだ 彼女らを驚かせたくなかった 彼は無言で手に残った食券を窓から捨てるとギアをバックに入れた
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