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だんだん音が聞こえてくる
サイレンの音だった
鬼岩は言った
「地獄耳だな」
大野は言った
「子供の頃からパトカーが好きで、サイレンが聞こえるといても立ってもいられなくて、そこら辺を探しまわった
そんな子供でした
本当は東大文系行きたかったんですけど英語と国語に苦手で」
その時パトカーがサイレンを鳴らして数台駆け抜けた
大野は興奮して行った
「ダメだ、現場を離れて事務方なんて出来ない
やっぱり監察官辞めたくないです
御一緒します」
鬼岩は初めて笑顔を見せた
「うれしいじゃないか
俺以外のキャリアにも猟犬がいやがるとは
万軍の味方を得た気分だぜ」
鬼岩は本線にもどりランプを降りた
そして車を止めた
「俺の親父は地元の高校を出て警察に入って、巡査部長の試験にも見向きもせず五十を過ぎたぐらいに鹿児島のそれはそれは田舎の警察の管内の駐在になった
あとは定年まで黙々と勤め上げて、定年になったら警備員でもしながら家庭菜園でもやりたい
そんな向上心のない男だった
しかしそんな親父にも過去があった
親父は戦後の混乱期の本の一時期愚連隊だったんだ
生きる事に必死だった時代、真面目な奴でも何かのひょうしで、そんな仲間に入っちまう
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