見殺し

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『何かあったのでは』 そう考えると不安はどんどん膨れて行った そしてついに居てもたっても居られなくなった 彼は思わず返信した 妻は全く受信する様子がなかった 彼の不安はどんどん大きくなって行った 彼は心の中で祈った やっと妻が受信した 彼は焦って言葉が出なかった 「あの」 妻から返事が来た 「バカ」 妻はすぐ電話を切った。 慌てて彼は電話をかけ直した 今度はすぐ妻は電話に出た 「何よ、忙しいのよ」 「何かあったのか?」 「何もないわよ、切るわよ」 妻はまたすぐ電話を切った 彼はほっとした とにかく何もない事でほっとした しかし気持ちが落ちつくと怒りがこみ上げて来た 『なんだ、あの態度は、一体誰のおかげで』 彼は気持ちを落ち着かせようとした しかし考えれば考えるほどムカムカして来た 『最近娘も生意気になっている 母親にそっくりな性格で可愛げがない』 彼は男に媚びない妻の毅然とした所が気に入って結婚したが、今に考えれば男に多少媚びる女の方が妻にするには相応しいのかもしれない 彼は結婚相手を間違えたかと考えた こう言う時男は
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