鬼岩の過去

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新聞記者は、怒りから新聞社を辞めると俺の所に全てを暴露しにきた」 「その記者が全て知ってたんですか」 「いや記者が知ってたのは概略だけだ 嗅ぎ回る前に新聞社が取材を止めて来たんだ」 「じゃあどうやって」 「疑惑の刑事を殴って蹴って半殺しにして」 「やっぱり」 「それでテープを回した この証拠があれば面子を潰された警察庁は黙っていない これで親父が仕組まれた罠に利用された証は証明出来る しかし俺は土壇場で躊躇した 親父が愚連隊だったのは事実だし、ヤクザの兄貴分と最後に手を取り合って死んだのは事実だ それを戦後の混乱期を忘れた世間がどうみるか おそらくヤクザと癒着していた警官が抗争の巻き添えを食った そうとしか見ないだろう それどころか少しづつ平穏になりつつある弟や妹の生活も再び世間の目に晒される事になるだろう 俺は握りつぶす事に決めた 親父は最後まで人間の何かを守って死んだ きっと守るべき何かを持ってる人間は親父の事を理解してくれるだろうと思ったからだ 暴行を加えた事を問題にしないよう言い聞かせて俺は刑事を離してやった もちろんそちらの出方次第ではテープをどこにでも持ち込むと脅してね
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