ストーカー

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繁華街と住宅街に別れていて、その間には田園地帯があった 繁華街での巡回では知人に会う事も多く神経を使い続けるが、住宅街との間にあるこの田園地帯は、人と会う事も稀で大変いやされた アメリカ生活の長かった慶次郎はやはり日本を狭く感じていて、広い場所を常に探していた だからこの田園地帯が、この町では一番好きだった 慶次郎は指でカメラのファインダーをつくり覗きこんだ アメリカは映画文化が日本とは比べようがないほど盛んでジュニアハイにも、かなりしっかりした映画研究会がサークルとして存在していた 慶次郎はその頃から普及がピークのハンディカムを持って仲間と共にロケーションを楽しんだ ここへ来るとその時の気持ちが蘇った 日本では少年達の憧れはサッカー選手、その後もスポーツ選手が上位だ しかしアメリカはもちろんアメフトとか野球選手が上位なのは当然だが映画監督も少年達の憧れの一つだ 少年達は早い時期からカメラを担いでロケーションに明け暮れる 一部の少年達にとってそれは女の子とダンスをするより、ずっと楽しい 慶次郎は自転車を止めて空気を吸った そして制服でそのまま寝転んだ 田園を通って来る風が大変気持ちいい 慶次郎は寝転びながらファインダーを手で作り、あっちこっちを見た
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