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そして突然動きを止めた
慶次郎のファインダーの中には田んぼの上に立ったいる粗末なかかしが入っていた
そのかかしは木の簡単な骨組みに野良着を着せ傘を被せたものだった
その時カラスが突然降りて来てかかしのかさの上に止まった
かかしはカラスになめられていた
カラスはかかしのかさをつつきまくっていた
慶次郎はおもしろそうにそれを見て、やにわにガラケーを取り出した
今のガラケーは簡単なムービーを撮れる物がある
どうやら、この光景は慶次郎監督の活動屋魂を揺さぶったようである
こうなると誰でも野心が頭をもたげる
上手く取れたら動画投稿するつもりかもしれない
その時突然一陣の風が吹いて来た
慶次郎は何かワクワクする物を感じた
カメラで言うところのシャッターチャンスの戦慄だった
そしてその瞬間が来た
突風がかかしに向かって吹き荒れたのだ
一瞬のその間、カラスが飛びさり、風によりかかしの笠と衣服が飛ばされた
まさに生き生きとした情景がカメラに収まった瞬間だった
こう言う物を芸術の感動と呼ぶのだろう
この後慶次郎が喜びのあまり飛び上がったと思われそうだが、慶次郎はガラケーを落とし膝を崩して後ずさりした
そしてガラケーを拾い逃げるように自転車に跨がり走って行った
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