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『もう少し待とう』
彼は、これで愛美との繋がりが切れるのをどうしても我慢できなかった
愛美と交際したいと言う野心があるわけではなかったし、この先展望が開けるわけでも、それを望んでるわけでもなかった。
しかし繋がりがなくなるのが嫌だった
かけがえのない物を失ってしまうような、そんな気持ちさえあった
美女に対する中年男の未練と言われれば、それまでだが
彼はその場にしばらく止まった
もし愛美が自分をからかうつもりがないなら、北条綾の殺害現場に車が置いてあるのだから、彼が来た事がわかるはずだ
彼を探して、もう一つの現場であるこちらに向かって来るはずだ
だから、ここで待つのが正解なのだ
もしトイレとか言ってても電話で連絡してくるはずだ
彼は待った、1分が一時間に感じるほどの長さを感じた
しかしケータイの着信音は鳴らず、彼はケータイの履歴を見た
『向こうで車を見たなら電話をかけるのが常識だろ
頭の悪い女だ
見かけによらず』
彼は苛立ちを隠せずタバコに火をつけた
それからしばらくまた時間が経った
しばらくだが、彼にとっては数時間にも感じられた。
腕時計を見て彼は正確な時間を判断した
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