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危険な賭けになるかもしれないが、彼の中に状況を少しでも進ませたいと言う気持ちがあったのだ
彼は偶然を装うには、なんと言って声を掛ければいいか考えながら、しゃがんで孫の霊に祈りを捧げている北条夫人の背中から近寄った。
夫人はこの前来た時より地味な色の長着と羽織りを着ていたが帯は同じだった
よほど思い入れの強い帯なのだろう
それともに夫人のこだわりの強い頑固さも著していた。
彼は言った
「もし、北条の奥様ではないでしょうか」
北条夫人は言われて振り向いた
「私は北条ですが
あなた様は」
年齢のせいもあり、北条夫人はすぐには思い出せないようだった。
最も彼の顔をしっかり見て覚えてもいなかったのだろう
彼は言った
「覚えていらっしゃいませんか
お孫さんの部屋を借りてる者です」
北条夫人は少し驚いたような顔で言った
「あーあーあなた思い出しました
まあ、偶然
こちらにお勤めなんですか
大変ですね、遠く通っていらして」
「いや、こっちには仕事で」
「失礼ですがお勤めは、よろしければですけれど」
「はい、名刺を」
彼は夫人に名刺を出した
北条夫人は丁重に名刺を受け取った。
北条夫人は立ち上がって名刺を見た
「まあ、この会社はカリスマ経営者の」
職業、または勤務先と言うのは、他人の信用を手に入れるためには大変便利だ
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