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『あの愛美さんが、すっぽかすなんて、やっぱりおかしい』
あの愛美さんと言うほど彼は唐沢愛美の事を知ってるわけではない
しかし愛美の物の考え方や色々勘案すると愛美が中年をからかって笑い者にする軽々しい女には思えなかった
確かに惚れた弱みのせいがあると言えるかもしれないが、それを差し引いても愛美は低級な女には見えなかった。
そう考えてみると彼は愛美に何かあったのではないかと考えざるを得なかった
彼はどんどん不安になって行った
愛美に嗅ぎ回るのは止めるように助言すべきだった
彼は後悔した
しかしその時着信した
ディスプレイは番号非表示だった
彼は受話器を取った
愛美の何とも言えない綺麗で澄んだ心地良い声が聞こえて来た
「ごめんなさい、呼び出しといて、車を見つけて連絡しようと思ったんだけど」
「気にしなくていい
君が無事で嬉しい」
「えっ無事?」
「とにかく会いたい
今どこにいるんだ」
「すぐ行きます
待ってて」
そう言うと愛美は一方的に電話を切った
「またかよ」
彼は少し腹を立てたが、それでも車を出て愛美の来そうな方角を見た
しかし突然声が後ろの方からした。
「耕三さん、お待たせしました」
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