第1章

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これは儀式のような物で余程のことがない限り本社に戻り管理職としての地位を上げて行く もっとも会社は都市銀行に牛耳られていて、重役になれる人間は少ない もっとも彼も定年まで部長になれればいいだろと言う気持ちである 地方の国立大の情報工学を出てセールスエンジニア畑を歩ん来た彼にとって、それさえ高値の花かもしれないが、そうでなくても、家族を守ってそこそこの生活は出来るはずだ 考えてみれば贅沢を言える立場じゃないと彼は反省した 生活が安定しているだけでもありがたい話である バブル崩壊以降入社である彼の世代は就職も厳しかったが、しばらくして日本社会がリストラムードに突入し、その地獄的状況でサラリーマンのルーキー時代をすごしていた あの時は毎日緊張していた 誰にも余裕を感じられなかった 何かミスをすればどこからか監視されてるような気がした 実際には個人の業績や素行ではなく部門の採算だと知らされた時は社会の冷酷さに震えた
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