見殺し

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そこには人集りがあった 哀れな企業戦士の亡骸を前にして人々が群れていた。 その企業戦士の名はS社企画営業部第三課係長島田晃 飛びおり自殺だった 彼は悪夢から目覚めた バーテンは言った 「大丈夫ですか田中さん」 彼は肩で息をしていた 「俺何か言った」 「いや、何にも言いませんけど そんな事より、もう帰ってお休みになった方が」 「もういっぱいだけ飲ませてくれよ」 「だめですよ 代行呼びますよ」 「あといっぱいだけ」 見かねたアルバイトの子が助け舟を出した その子はカクテルを出し言った 「これで終わりですよ」 彼はカクテルを受け取り一気に飲み干した バーテンは女の子をカウンターの隅に呼び注意した 「あの人は適量超えると結構ヤバいんだよ」 「えっ、あんな大人しいのに」 最後のカクテルで彼は泥酔した 理性のタガがかなり緩くなってしまっていた 普段の彼なら、ここまでは乱れなかっただろう 昨日からの苛立ちや自己嫌悪が折り重なって彼の感情を苛み、酒に悪酔いさせたのである。 彼は酔いでうたた寝した。
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