見殺し

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彼は初めて呼ばれた理由を理解した 懲罰だ 補佐は皮肉気味に言った 「君が熱心に勧めて商店街に入れて貰った監視カメラが君の武勇伝の証拠をしっかり残してくれたよ、満足かね」 この言い方に彼は少しカチンと来て思わず反論した 「しかしあの時は仕方なく、言わば正当防衛で」 「こちらも事情はちゃんと調べた 確かに見て見ぬふりは許されない しかし警察が来るまでの短時間、防御に徹するべきではなかったのかね、まともなサラリーマンとしては、特に君は」 補佐はリモコンを押した そばのモニターに彼の履歴データが映った 補佐は特技の空手三段を指差した 「痛くも痒くもないだろう、君の腕の防御力は鉄の棒のような物だろうからね」 「しかし」 「反論するのかね 君は社長にも反論出来るか」 「しゃ社長」 「ご覧になったんだよ、我が社にとって聖地のような商店街で君が暴れる姿をつぶさにだ」 彼は奈落に突き落とされた気分だった まさか社長があの乱闘を見ているとは思わなかった もしそうであったら、ボコボコにされても我慢したのに クビと言う不安が彼を襲った 散々言った挙げ句補佐は言った
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