第1章

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技術職であり、まだ若かった彼は何とか生き残り、現在まで会社にいるのだが、その時感じた教訓がある それは会社人間つまり何のとりえもないサラリーマンは、業績のいい花形部門に席を置かないと、いつ切り捨てられるかわからないと言うことだった そして、そのリストラ時代に彼は他人を見捨てることが出来る人間になったような気がする そのような彼であるから、職場でのポストや自分への待遇に対して異常なほど神経質だった 例えば経理が誤って、彼につけるべき手当てを忘れたりすると、それがどんなに少額でも、かなり落ち込んだ 会社から軽く見られていると思ってしまうのだ。 まさに小市民その者になってしまったのだった しかしそれも、愛する家族のためだった かれはこのまま、平凡に人生を終えていいと思っていたし、それが望みだった 否切なる願いと言ってもいいくらいだった 彼の同僚や友人の中には平凡な人生に飽きて刺激を求めて不倫をしたり、会社をやめたり、博打で大きな借金を作った者もいたが彼はそう言う刺激を求めず来た
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