見殺し

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天かける切符を手に入れたんだぞ 大企業の重役夫人になってから亭主の偉さに気がついたって遅いからな」 彼は思わぬ幸運の切符に興奮が抑えられなかった センターのスタッフ達は喜んでくれたのが彼は嬉しかったが一緒に頑張った連中を本社に連れて行けないのが残念だった スタッフのほとんどは正社員だが地元コネの現地採用だ 地元に気を使って社長が学歴や能力を無視して採用していて、リストラの時も守られた。 変わりに出世も有り得ない センター長だけは本社採用だが社長と同い年の中途採用ですぐ定年となる 足掛け四年間良く便宜をはかってくれたし、協力もしてくれた、今は何も出来ないが出世したら恩を返すつもりでいる 彼はそう自分にいいきかせてサービスセンターへの思いを断ち切った 所長を含めたスタッフ有志でお祝いを兼ねた壮行会をやってくれると言われたがスタッフや所長の気持ちを考えると彼は派手に送ってもらう気持ちになれなかった 一諸に頑張っても本社採用の人間にしか出世の道がないのは気の毒でしょうがなかった いくら入社の時採用がアマアマでも差別だと思った 彼は社内で缶ビールとスナック菓子で充分だと言って飲み会を止めさせた。
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