見殺し

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しかし社内の会議室での家飲みの送別会も、ただでは収まらなかった 最初愛想しく飲んでいた所長は、突然彼の横へ来ると缶ビールをつぎながら会社に対するグチを言い出した。 そのうち泣き出してしまった しかしトラブルはそれだけでは収まらなかった かねてより彼に密かに思いを寄せてた女子社員が酔った勢いで彼の前の床にぺたんと座り込み、突然捨てないでーと抱きついた、もちろん半分冗談なのだが思い込みの強い女で、それなりに真実味があったのでスタッフ達は、彼に疑いの目を向けた。 彼はやんわりと否定すると伏魔殿化してしまったサービスセンターから逃げ出すように外へ出た 外へ出てから彼は子供のように走り出した 伏魔殿から離れたいと言う気持ちがあったが、それ以上に嬉しくて小躍りしながら走り続けた クタクタになるまで走り続けた ヘトヘトになって膝をついた。 そのままゴロンと大の字で寝て夜空を見た 星が綺麗だった 息を整えると喉が乾いてる事に気がついた 送別会ではビールを飲むどころではなかった 全然落ち着かなかった まるで針の筵だった 同僚達や所長の視線にはぜんぼう、嫉妬、苛立ちの全てがあった。
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