見殺し

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ハンカチを洗わなければならないが、近くに水道のような物はなかった しかし清潔好きの彼はこのままではいられなかった ふと見ると彼の現在地から五百メートルぐらい先に自動販売機エリアが見えた 『あそこでミネラルウォーターを買って洗浄しよう』 彼は小走りで自販機エリアまで走った 自販機エリアの内容はタバコ、酒、雑誌、カップラーメンで、お目当てのジュース販売機は一つだけだった。 しかし幸運にもそこにはミネラルウォーターの販売ブースが4つもあった。 彼はほっとした しかしほっとしたのもつかの間、彼がウォーターを買うには障害があった。 目的とする自動販売機の前に中年の男が座り込んでいるのだ その男は年齢は五十才ぐらい、中肉中背で作業着の上下にジャンパーを羽織っているが、服が全然汚れていない所を見ると作業員ではなく、エンジニアか監督だろう、機械系か土木系のような印象を彼は感じた 彼はもともと他人を不快にさせるような言い方をしないが、大事な時期なので余計やんわり言った 「すいません、お使いでなければ、どいていただけますか」 その声を聞いて中年男は立ち上がってこちらを向いた 人の良さそうな風貌に
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