見殺し

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「いえ、あの無理に割り込んだから」 「あは、そんな事 よろしければ両替しましょうか」 「お気遣いすいません でも退散します」 男は彼のスーツに飛んでいる飛沫に気がつき鼻をくんくん鳴らした 男は口に当てた手を伸ばすリアクションを彼に示して言った 「あなたやっちゃいましたね」 「はい、やっちゃいました」 「はあ、それでね ちょっとそれ貸して下さい」 男は、彼からハンカチを預かりむかえ側の塀の上においてあった水筒の水でハンカチをゆすいだ。 そして匂いを嗅いだ 「うん、まだ匂うな」 男は小銭を出すと自動販売機に放り込み次々水のボタンを押した 彼は恐縮した 「そんな事までしていただいたら」 男は返事をする代わり買った水の二本を渡した 「今のうちに直接スーツに水を掛けた方がいい」 「すいません」 男はハンカチを洗うと良く絞って彼に返した 彼はますます恐縮した 彼は言った 「ありがとうございます あの私こうゆう者ですが」 彼は名刺入れから名刺を出して渡そうとした しかし男は拒否した 「そんないいじゃないですか、大袈裟な、サラリーマンの悪い癖だな、すぐ名刺交換は」
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