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そのまま反対側の土手のスロープを転がって落ちてしまった
彼はそのまましばらく気を失った。
気がついてみると鬼門とも言える反対側の土手の下に転がっていた。
彼は辺りを見た
男が言ったように、まばらに遠くの方に人家のあかりが見えるだけで、後は畑と田んぼと原っぱと林しかなかった
遠くで犬だか狸だかわからない鳴き声が聞こえて来た。
反対側とはまるで別世界だった
都市計画のせいだからか、いずれにしても異常なほどの閑散たる様だった
ろくすっぽ道らしい道も通ってないし、車の影も見えない
あの男によると、地元の人間でも迷うそうだ
早く帰りたいと言うのに、なんて事であるか
彼は思った
『こうなるなら、意地を張らず乗せてもらえば良かった』
彼は転がった時打った身体の痛みに耐えながら立ち上がって土手を登ろうとした
ところが
登れなかった
その原因はスロープに生えている葦があまりにも密集しているせいだった
そのため軸足が安定しない上に、重心が不安定で滑る葉っぱを踏み潰し上に行く力が働かないのだ
無理に登っても土手の近くまで行くと滑り落ちてしまう
彼は何度か試みたがあきらめた
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