見殺し

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頭が切れそうになったが拳を固めて必死にこらえた 若者の男に対する嫌がらせは、まだ続いた。 若者は言った 「どうぞ私の代わりに」 男は続けた 「どうぞ私の代わりに」 「この人に殴られて下さい」 「この人に この人に」 「ほら続けろ」 「私の代わりに警察に通報してくれ」 「なんだとこの野郎」 男は哀れな顔で彼を拝んだ 「たのむ~」 若者は彼を襲おうとした。 しかし彼はそれをよけた 「わかりました」 彼は責任から解放されたような肩から力が抜けたような気分になった 後ろから若者が切れて男を殴っている音が聞こえたが彼は耳を塞いで逃げた 少し逃げて警察に電話しようとケータイを出した その時彼は気がついた ケータイが使用不能である事を これでは警察に連絡が出来ない これでは何も義務を果たせない 市民としての常識問題になってしまう 彼は必死にロック解除ナンバーを思い出そうとした しかし駄目だった 辺りを見回した、しかし電話ボックスのような物はない それどころか、こちら側は人家もないのだ まだそれほど遅くないのに誰も通らなかった。
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