見殺し

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男の両目から血の涙がサーと流れた 彼はもう正気ではいられなかった 這って後ずさりをした彼は突然爆発したように逃げ出した 土手を夢中で登り 、気がつくとタクシーの前に飛び出していた。 タクシーのヘッドライトの中で彼は死を覚悟した。 しかし寸前でタクシーは止まった タクシーの運転手が怒鳴った 「死ぬ気か」 それからの彼は少し正気を失った 彼は車のボンネットを両手でガンガン叩くと言った 「乗せろ」 運転手はその剣幕に怯えた 「すいません、これは予約車で」 「知るかそんなの いいから乗せろ」 「わかりました」 彼は後部座席にドカッと座って言った 「○市だ」 車は走り出した 彼の興奮が落ち着いて来て良識が戻って来た 「運転手さん、すいません御無礼を」 運転手はまだ怯えていた 「いえ、いいです、高速に乗っていいですか」 「お願いします」 彼は思い出した 「運転手ケータイあります?」 運転手はケータイを前からよこして言った 「使って下さい」 「かります」 彼は救急車に連絡を取ろうとした しかしもし奴が戻って来てたら被害が増える
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